ICL(眼内コンタクトレンズ)手術は、視力矯正の選択肢として注目を集めています。
レーシックとは異なり、角膜を削る必要がないため、見え方の質が高く、可逆的な治療法として評価されています。
しかし、手術を検討する際に気になるのが、白内障との関係です。
白内障は水晶体が濁ることで発生し、視界がかすむ、まぶしさを感じやすくなるなどの症状を引き起こします。
ICL手術によって白内障のリスクが高まるのか、不安に思う人も多いでしょう。
この記事では、ICL手術と白内障の関係について詳しく解説します。
目次
そもそも白内障とは何か
白内障とは、目の中にある「水晶体」という部分が濁ることで視力が低下する病気です。
水晶体は、カメラのレンズのように光を通してピントを合わせる役割を持ちます。
正常な状態では透明ですが、白内障になると濁って光がうまく通らなくなります。
ICL手術は白内障になりやすい?
ICL(眼内コンタクトレンズ)手術は、視力矯正の新たな選択肢として注目を集めています。
しかし、手術を検討する際に「白内障の原因になるのではないか」という懸念を抱く方も少なくないでしょう。
結論からいうと、ICL手術が白内障の直接的な原因となったり、将来的に発症リスクが高まったりすることはありません。
ICL手術では、眼のなかにある虹彩と水晶体のあいだに挿入します。
水晶体とわずかながら接触するので、発症リスクは0%とは言い切れませんが、接触する部分は、光の通り道ではないごく周辺部分で、見え方に影響するような変化が起こる確率はほとんどありません。
かつては、ICLが眼のなかの水分の循環(房水循環)を妨げ、代謝異常が発生し白内障の原因となるおそれがありました。
しかし、ICLは2014年に大きな改良が施されており、現在は、近視矯正用のものはすべて房水循環を妨げない構造を採用した「ホールICL(穴が開いているICL)」です。
よって、ICLが白内障を引き起こすことは考えにくいといえます。
ICL手術後に白内障になったらどうすればいいの?
白内障は、ICL手術が直接的な要因にはなりません。
しかし、ICLを挿入したひとも、年は取りますのであとに、加齢や糖尿病などが原因で白内障になることもあります。
もし、術後に白内障になった場合は、ICLを取り出して同時に白内障手術を受けることが可能です。
とはいえ、ICLを除去して、違う手術を受けたあとの見え方に不安を感じる方もいらっしゃるかも知れません。
白内障になった方が、白内障手術を受ける場合、ICLの入っている人も入っていない人も、術後の見え方は同じです。
白内障手術時に入れる眼内レンズの選択肢も同じです。基本的な違いは、手術時間だけで、ICLを取り出す手間の分、数分手術が長くなるとお考え下さい。
ICL手術と白内障手術の違い
ICL手術と白内障手術は、どちらも視力を改善する目的で行われます。 しかし、手術の対象や方法には、以下のような大きな違いがあります。
この二つは本来、目的が大きく違うのですが、同じ眼内レンズと言うことで、混同されがちですので、ここで整理しておきましょう。
46才以上で、既に老眼になっている人にとっては、ICL手術か白内障手術による眼内レンズ挿入かの選択を考えるケースもあります。
ICL手術 | 白内障手術 | |
治療目的 | 近視や乱視を矯正する | 病気による症状・視力低下から回復させる |
対象者 | 強度近視や円錐角膜の人 | 症状によって日常生活に支障をきたしている人 |
手技 | 虹彩と水晶体のあいだに眼内コンタクトレンズを入れる | 濁った水晶体を除去し、代わりに眼内レンズを入れる |
それぞれの特徴を理解していれば、適切な治療方法を選ぶ際の参考になります。
手術の目的と対象となる症状
ICL手術は、近視や遠視、乱視を矯正するための方法です。
視力が悪く、メガネやコンタクトレンズを使用すれば、良い視力は得られるけれど、それらに依存せずに過ごしたいという人に適しています。
水晶体を温存したまま眼内にコンタクトレンズを挿入するため、可逆的な治療としても知られています。
一方、白内障手術は、水晶体が濁ることで視界が悪くなった人を対象としています。
白内障が進行すると、視界がかすんだり、明るい場所でまぶしさを強く感じたりするようになる、つまり、眼鏡やコンタクトレンズを使っても、よく見えなくなります。
これらの症状が日常生活に影響を及ぼす場合、手術によって濁った水晶体を除去し、人工のレンズに置き換えます。
手術の方法や使用するレンズ
ICL手術では、特殊なレンズを眼内に挿入することで近視や乱視を矯正して視力を改善します。
このレンズは水晶体の前に配置され、角膜を削る必要はありません。
手術時間は短く、回復も比較的早いとされています。
一方、白内障手術は、濁った水晶体を超音波で細かく砕き、吸引した後新たな眼内レンズを挿入する方法です。
ICLと異なり水晶体を完全に取り除くため、元の状態に戻すことはできません。
使用するレンズには単焦点レンズや多焦点レンズがあり、老眼を矯正することも出来るため、年齢や術後のライフスタイルに合わせて選択できます。
術後の回復期間
ICL手術後は、視力が安定するまで数日かかることがあります。
ICL手術よりは術後炎症が強いですので、手術直後に軽い違和感を持つことはありますが、痛みを伴うことはほとんどありません。
目に怪我をしないよう、しばらくの間は激しい運動を避けることが推奨される点は、ICLと共通です。
白内障手術では、視力が回復するまでの期間は個人差があります。
ICLと同様に、手術後しばらくは、点眼薬を使用することが必要です。
また、術後の検診を受けることで異常の有無を確認できます。
ICL手術の費用はどれくらい?保険適用はされる?
ICL手術を検討する際、費用がどの程度かかるのか気になる人は多いでしょう。
特に、健康保険の適用対象になるかどうかは、治療を決めるうえで重要なポイントです。
白内障手術と比較しながら、保険適用の違いについて詳しく解説します。
ICL手術は保険適用されない
ICL手術は、近視や遠視、乱視を矯正する目的で行われます。
視力を回復させる治療ですが、保険制度上は美容目的の手術と同じ扱いになります。
そのため、公的な健康保険の適用対象には含まれません。
費用は手術を受けるクリニックやレンズの種類によって異なります。
一般的には、片眼で30~60万円程度かかることが多いです。
多くの患者さんは、両眼手術をすると思われますので、その2倍の費用と考えると良いでしょう。
医療ローンを利用できるクリニックもあり、分割払いの選択肢もあります。
負担を軽減する方法を検討することで、無理なく治療を受けられます。
白内障手術は保険適用される
白内障手術は、視力の低下が進み、日常生活に支障をきたす場合に行われます。
病気の治療として認められているため、健康保険の適用対象となります。
自己負担額は保険の種類や医療機関によって異なりますが、比較的少ない費用で受けられます。
さらに、高額療養費制度を利用することで、一定額以上の自己負担が軽減される場合があります。
民間の医療保険に加入している場合は、給付金を受け取れることもあります。
保険の適用範囲を事前に確認し、最適な選択をすることが大切です。
ただ、白内障手術のなかでも、老眼も一緒に矯正する多焦点レンズを選択する場合は、保険外医療になり、費用は大きく異なります。
おわりに
ICL手術は、視力矯正の選択肢として有効な方法です。
角膜を削らずに視力を改善できるため、安全性が高く、術後の生活の質が向上するメリットがあります。
しかし、全ての手術に共通する、長期的なケアは必要です。
手術後に白内障が発生することはごく稀ですが、万が一の際は適切な対処が求められます。
ICLを装着したままでも白内障手術を受けることは可能であり、事前に医師と相談することでスムーズに対応できるでしょう。
また、ICL手術は自由診療のため、健康保険の適用外です。
一方、白内障手術は保険適用の対象となるため、費用負担の軽減が可能です。年齢によっては、どちらの手術で対応するかを検討するケースもありますが、それぞれの治療法の特徴を理解し、ライフスタイルや予算に応じて適切な選択をすることが大切です。
ICL手術を検討する際は、信頼できる医療機関(出来れば、ICL、白内障、両方の手術に関する講演論文実績を持つ医師の常駐する医療機関)で詳細な説明を受けることが重要です。
定期的な検診を受け、目の健康を維持しながら、快適な視力を手に入れましょう。