白内障手術は視力を回復させ、生活の質を向上させる治療法です。
しかし、術後の生活には、目を守りながら適切なケアを行う必要があります。
特に、運動やスポーツを再開するタイミングは慎重に判断しなければなりません。
本記事では、日常生活で注意すべきポイントや運動の再開時期について詳しく解説し、快適で安全な術後の過ごし方を提案します。
目次
白内障手術が必要な3つの理由
手術以外に根本的な治療法がない
白内障を完全に治すには、手術しか方法がありません。
一度濁ってしまった水晶体を、完全にもとの状態に戻す方法がないからです。
具体的な手術のやり方としては、濁った水晶体を取り除き、眼内レンズという人工の水晶体を眼のなかに入れます。
とはいえ、手術に抵抗がある人も多いでしょう。
しかし、白内障の進行は自然に止まることはなく、放置することで視力がますます低下します。最終的には失明のリスクを伴う可能性もあります(発展途上国の失明原因は、未だに白内障がNo.1です)。
手術では局所麻酔を使用するので、痛みはありません。ご安心ください。
内服薬や目薬で、一時的に白内障の進行を遅らせられる可能性も、研究レベルではあります。しかし、実臨床レベルで、そのようなケースは希で、しかも完治させることはできないため、視力を完全に回復させるにはやはり手術が必要です。
日常生活の質(QOL)を取り戻せる
白内障による視力の低下は、車の運転、読書、テレビ鑑賞、スポーツ、さらには家族や友人とのコミュニケーションにも影響を及ぼします。
例えば、運転中に信号や標識が見えにくくなることは重大な事故につながる危険性があります。
また、スポーツや趣味を楽しむ際に視界がぼやけるといった問題も、生活の満足度を下げる要因です。
手術を受けることで、低下してしまった日常生活の質を元通りにし、快適な生活を送ることは、とても大切です。
合併症を防げる
白内障を長期間放置すると、緑内障や網膜剥離など、続発的に他の目の疾患を引き起こすリスクが高まります。
これらの疾患は視力にさらに深刻な影響を及ぼすため、早期の手術が重要です。
また、白内障そのものも進行が進むと手術の難易度が高くなり、回復までの時間も長くなってしまうおそれもあります。
近年は医療技術の進歩により、白内障手術は短時間で行われる安全性の高い治療法です。
一般的には20分程度で完了し、日帰りで手術を受けることも可能です。
白内障は、あまり重症化しない内に手術を受けることをおすすめします。
白内障手術で眼内レンズを入れてもスポーツに影響はない?
白内障手術では、濁った水晶体の代わりに眼内レンズを眼のなかに入れます。
眼内レンズを入れても、基本的にスポーツに影響はありません。
「眼のなかに入れる」と聞くと、コンタクトレンズを連想する人も多いでしょう。
しかし、眼内レンズはコンタクトレンズのように眼の表面に乗せているのではなく、眼の中で、水晶体内容物が入っていた袋の中に収めます。
眼内レンズを入れてもコンタクトレンズのようにズレることは、特殊なケースを除いては起こらないので、スポーツにも影響がないといえます。
白内障手術後の運動(スポーツ)はいつから?
白内障手術後の運動再開は、運動の種類や手術後の経過によって異なります。術後早期は、術眼の安全確保術後は眼に負担をかけないことが最優先であり、医師の指示に従うことが重要です。
術後1~2週間ほどで可 | ◎軽い汗をかく程度の運動なら可 例:散歩、軽いジョギング、サイクリング、ヨガ、軽い筋トレ、卓球、プール歩行、ゴルフ(練習場)など |
術後1~2週間ほどで可 | ◎ヒトやモノなどの接触をともなう激しいスポーツ 例:ゴルフ(ラウンド)、テニス、サッカー、野球、トレーニングジムでの筋トレ、格闘技、バスケットボール、バドミントン、登山、スキーなど |
【術後1~2週間】散歩やジョギング、ヨガなど軽い汗をかく程度の運動
散歩や軽いジョギング、ヨガなど、身体への負担が少ない運動は、手術後1~2週間程度で再開可能です。
プールは、ゴーグルを着用せずに水の中を歩く程度なら構いませんが、プールの水には細菌が多いことは考慮が必要です。ゴーグルは眼を圧迫するので厳禁です。
ゴルフも、打ちっ放しなどで軽くスイングするくらいなら問題ないでしょう。
本格的に遊泳したりラウンドを回ったりするのは、術後1ヶ月以降がおすすめです。ラウンドでは土や葉には細菌が多いからです。
ただし、術後の経過や体調によっては、医師からもう少し待つように指示される場合もあります。
また、汗には細菌が含まれているので、運動の際は眼に汗が入らないようにこまめにふき取るなど工夫が必要です。
散歩・ジョギングなど、屋外での運動を再開する際は、直射日光や埃が目に入らないよう、サングラスを着用することをおすすめします。
術後1~2週間ほどで可 | ◎軽い汗をかく程度の運動なら可 例:散歩、軽いジョギング、サイクリング、ヨガ、軽い筋トレ、卓球、プール歩行、ゴルフ(練習場)など |
【術後1ヶ月以降】テニスやゴルフ、格闘技などヒトやモノが目に接触するスポーツ
テニスやゴルフ、格闘技などのように、体を大きく動かしたり、ヒトやモノが目に接触するおそれがあるスポーツは、術後1ヶ月以降が目安となります。
とくに球技は様々なアクシデントが起こりえます。
また、ボールが目に当たるリスクがあるため、再開後もしばらくは、スポーツ用の保護メガネを使用することを検討してください。
術後1~2週間ほどで可 | ◎ヒトやモノなどの接触をともなう激しいスポーツ 例:ゴルフ(ラウンド)、テニス、サッカー、野球、トレーニングジムでの筋トレ、格闘技、バスケットボール、バドミントン、登山、スキーなど |
白内障手術後の仕事や運転再開はいつから?
白内障手術後の仕事や運転の再開時期は、術後の回復状況や仕事内容、運転環境によって異なります。
無理をせず、医師の指示に従いながら安全に復帰することが大切です。
手術直後の運転は要注意厳禁!見え方がこれまでと少し変わります。
白内障手術後に視力が回復する速さは人それぞれですが、手術直後の車や自転車、バイクの運転は最初は注意が必要です。
術後、眼帯がとれるまでの間は、当然運転はできません。
片目だけ手術をした場合も同様です。片目だけでは周囲のものを立体的に見にくくなるので、距離感や空間把握能力が低下。事故のリスクが上がります。
眼帯が取れた後も、運転が眼に悪いわけではありませんが、白内障の目で見ていたときと色が異なっていたり、これまでの眼鏡では新しい眼には合ってないなど、自身の眼の環境が変わっています。これらの変化に脳が慣れるまで、安全運転の観点から注意が必要です。特に夜間の運転では、このような変化が影響しやすいので、先ずは昼間の短時間から始めましょう。
術後1週間以内に長距離の移動を要するときは、タクシー・バスなどの公共交通機関を利用したり、親族・知人などに送迎してもらったりしましょう。
仕事の再開は術後1~2週間を目安に
デスクワークや軽作業の場合は、術翌日~1週間程度で再開できることが一般的です。
重い荷物を持つ仕事や、粉塵が多い環境での作業は、術後の回復状況によってさらに時間が必要になることがあります。
特に顔や目にものが当たる可能性のある作業は、医師の許可を得てから再開しましょう
白内障手術後の生活における5つの注意点
白内障手術は視力を取り戻すための有効な治療法ですが、術後の生活で注意すべきポイントを守ることで、回復をスムーズに進めることができます。
ここでは、運動以外で特に重要な5つの注意点を紹介します。
目の保護を徹底する
術後の目は非常にデリケートな状態です。
医師から渡される眼帯や保護カバーは、就寝中や外出時に必ず着用しましょう。
手術直後に目を擦ることや、目に強い衝撃を与えることは厳禁です。
特に小さな子どもやペットがいる家庭では、不意に目に触れられるリスクがあるため注意が必要です。
また、外出時は砂埃や風などから目を守るため、保護めがねを着用することもおすすめです。
入浴・洗顔時の水分対策
術後1週間程度は、目に水が入らないようにする必要があります。
水には細菌や塩素が含まれ、感染症や炎症を悪化させるリスクがあるからです。
シャワーを浴びる際は顔を避け、体を洗うだけにとどめるか、目をしっかり閉じて慎重に行いましょう。
洗顔は目元を避けるか、湿らせたタオルで軽く拭く程度にとどめてください。
洗髪が必要な場合は、美容院などでプロに任せるのも一つの方法です。
清潔を保ちながら、目を守ることを心がけてください。
化粧やスキンケアの制限
術後は感染症のリスクを避けるため、目の周りの化粧やスキンケア製品の使用を控える必要があります。
アイメイクやクレンジング剤は、目に化学物質が入るおそれがあり、またメイク操作そのものが、瞼の上から眼を圧迫してしまうため、少なくとも術後1~2週間は使用を避けてください。
スキンケアについても、目元に触れるケア際は極力控えるようにしましょう。
医師の許可が出るまでは、シンプルなケアにとどめ、目の健康を最優先にすることが大切です。
重い荷物を持たない
術後の回復期間中は、重い荷物を持ち上げたり、力を入れる動作を避ける必要があります。
腹圧が上がると眼圧にも影響を与え、術後の回復を妨げる恐れがあります。
買い物や家事でどうしても重い荷物を運ぶ必要がある場合は、家族や友人に協力をお願いするか、配送サービスを利用するのも一つの方法です。
無理をせず、目に負担をかけないように心がけましょう。
定期検診を欠かさない
最近は、術後必要な通院期間も短縮される傾向もありますが、術後の経過を確認するための定期検診は、回復を順調に進めるうえで非常に重要です。
術後の視力や目の状態を専門医が確認することで、異常があれば早期に対応できます。
特に、痛みや視力の低下、目の充血などの症状が現れた場合は、放置せず早急に医師へ相談してください。
検診時には、日常生活で気になることを医師に相談することで、より安心して回復期間を過ごすことができます。
おわりに
白内障手術後の生活では、目を保護し、負担をかけないことが重要です。
軽い散歩やジョギングなどの運動は1~2週間後から可能ですが、激しいスポーツは1ヶ月程度は控えましょう。
また、入浴や化粧の制限、重い荷物を持たない配慮、定期検診の受診も大切です。
これらを守ることで、術後の視力回復をスムーズにし、再びスポーツやアクティブな生活を楽しむことができます。
医師と相談しながら無理のないペースで日常を取り戻してください。