院長ブログ(医療の真実、医者の舞台裏)Blog

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大きな学会を主催するということ 裏話1~マイルド編

さて、学会長の仕事は、学術講演のプログラム作成、演者、座長の選定と依頼などの他、皆さんに楽しんで頂くおもてなし企画も考えます。ですので、全国学会ともなれば、準備にかなりのマンパワーが必要になるので、これまでは、学会長は○○大学△△教授というパターンが殆どでした。そこに大勢居る医局員達(さらには、医局秘書、研究スタッフなど)が、文字通り駆り出されて、会場の下見から事務作業、各所への連絡、無数にある雑用を、やりたい or やりたくないに関わらず、あてがわれて進めていたのです。

ところが最近は、イベント会社やツーリスト会社が、「学会屋さん」部門を作って、事務的な作業のかなりの部分を請け負ってくれるようになりました。必要のある処にビジネスは生まれますね。当然費用はかかりますが、これまで、医局員達の義務感(忠誠心?)で賄われていた部分を、プロの集団に任せることで、お医者さん達は、日々の診療への影響を受けることなく、主催学会の準備を出来るようになったのです。非常に合理的なシステムが構築されたと思います。

そのために起こった変化は、それまではマンパワーの関係で、実質的に全国の大学病院で持ち回りになってた学会長、中には「あれ?この人、手術してるんだっけ?」と言うような教授が指名されることもありましたが、膨大な事務作業を学会屋さんに任せられるようになったため、学会長には、総合病院、眼科病院、個人クリニックまで含めて、純粋にその分野でリーダーシップを取っている人が指名されるようになったことです。

一方お金の話ですが、あれだけの大きな会場(京都国際会議場は、日本で2番目に大きな会議場です)を借りた大規模イベントですから当然億単位のお金が動きます。その収入源はなんでしょう?皆さんが払う参加費でしょうか。JSCRSの場合ですと、それは全体の20%位で、最も多いのが、企業展示料(企業展示ブースの使用料)で、次がランチョンセミナーなどの企業セミナー、それぞれ30%以上です。意外に思われるかも知れませんが、これらは、例えばJSCRSですと、白内障手術関連企業が、自社製品を白内障術者に手に取って見て貰い、その魅力を直接伝えられる、またセミナーで自社製品の魅力を、人気ドクターに語って貰える、実は最も費用対効果の高い宣伝の場で、200万、300万円単位のお金が動きます。
なので、最近のweb, オンデマンド学会などは、会場費はかからなくても、これら広告費収入も見込めないので、小さな研究会レベルでもなければ、これを継続するのは構造的に無理といえます。これは、運営に関わった人なら皆分かっていますが、「もう、学会は全部オンデマンドで良いよね」などと言っている人達は、この事情が分かってませんし、そもそも、パソコンに向かってする講演に、演者は準備も気合いが入っていません。聴講者の得られる情報のクオリティも下がっているのです。何年かに一度なら良いかも知れませんが、これが続くと、学会そのもののクオリティが低下することは自明でしょう。日本以外の学会は、とっくに元のリアル開催に戻っています。

 また、お金の話が続いて恐縮ですが、学会場の休憩エリアに、「ご自由にどうぞ」のポカリやジュース、コーヒーサーバーが置いてあるのをご存じでしょうか。これは、企業からの提供のものもありますが、多くは、学会開催者が準備しています。しかし!この飲料、原価以上の持ち込み料を、会場側に払わなければいけないのです。私は、会長になるまで知らなかったので、見積もり明細に「お~いお茶280ml 単価320円」と見つけた時、「これ何?」と、会長権限でバッサリと全て切りました。喉が渇けば自販機で買って貰えば良いことです。また、毎年殆ど残って終わる懇親会でのケータリング料理も、会場の指定業者からしか入れられず、これがまた、かなりの割高です。勿論、今回はコンサートにしたので、これも削除。一方、今回の器械展示場には、輸入車の展示も行い、ここからも広告収入を得ました。こちらも、輸入車ディーラーと手術医とのマッチングが良く、win-winの企画です。
学会での黒字は、学会法人の財産になりますし、赤字も、学会法人の持ち出し(原資は会員の貴重な会費)になるので、学会長には、シビアな経営的感覚も必要なのです。反対に、参加者の皆さんに楽しんでいただける、おもてなし企画も会長の腕の見せ所。今回は、杏里のコンサートや打ち上げ花火を学術プログラム後の夕刻に企画しました。コロナ渦の今こそ、学会は本来、華やかな非日常感の中で学ぶ、心躍る場だったことを、皆に思い出して欲しかったからです。(なので、今年当院は、大型医療機器購入は控えます:笑)

 以上、今回は、ゆるい裏話をご披露しました。次回は、ちょっと辛口、ブラックとも言える裏話をご用意して、こちらは都合上9月下旬に載せようと思います。

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