新型コロナウィルス感染症の影響で、様々なイベントが延期、中止になっています。眼科関連の学術講演会、学会も、次々と中止に追い込まれ、私の講演も既に、国内国外合わせて6つが中止になっています。講演準備や講演出張そのものが無くなった時間を有意義に使いたいものです。
さて今回は、その学会の、もっと困った裏話です。皆さんの受けられる医療にも少なからず影響を落とすものですので、少しお付き合いください。
コロナ騒ぎの少し前、1月末に「日本眼科手術学会」という学会が開催されました。毎年この時期に行われ、日頃手術に取り組んでいる眼科医が、毎年約3000人(日本の眼科医の4人に一人)出席する、眼科関連では国内3番目に大きな学会です。
白内障・眼内レンズ手術を専門にしている私は、今年もここで、6つの講演、3つの座長の出番があり、大変忙しかったのですが、その様子をお伝えするのは写真だけにしておいて、いま、この学会を巡って、ちょっと困ったことが起こっています。
手術学会、と言うだけに、そこには当然、大学病院、その他の病院、私のような個人クリニックの術者、あらゆる施設から、やる気のある医師たちが、その所属にかかわらず一堂に会します・・・・本来は。
ところが、手術に真面目に取り組み、その技術向上を目指す医師が勉強に来るべきこの学会への参加を、禁止されている先生が沢山いるのです!
別に、何か不祥事をやらかして、学会から参加を断られているのではありません。
その先生たちは、上司の都合で、「君たちは参加しないこと」と指示されているのです。にわかには信じがたい話ですよね。
上司から参加を止められている先生というのは、主には全国の大学病院の先生です。
その理由が、いかにもお粗末なのですが、非常に簡単に説明しますと、「研究活動を中心にしている大学の教授 vs 特に白内障手術を中心に臨床学術活動をしている手術医師の抗争」なのです。そして、話を複雑にしているのが、全国大学教授間に存在するヒエラルキーです。
元を正すと、教授の中のボスとも言える「大ボス」と、白内障手術専門医との覇権争いなのですが、件の「日本眼科手術学会」と「日本白内障屈折手術学会」での覇権争いに敗れた「大ボス」が、今度は一転、この二つの学会への参加ボイコットを、小ボス達、つまり、その他の全国の教授達に通達したのです。そうすると、(ここが、自身の技術力で生きている、我々手術医には理解に苦しむところなのですが)小ボスは、どんな理不尽な要求でも大ボスの指示を聞かなければいけないらしく、自分たちの教室の医局員達に、不参加の指示を出したのです。
本来、これから手術を学びたい若い医局員達の勉強の機会を作ったり、研究発表のチャンスを取ってくるのが仕事のはずの教授が、反対に、その芽を潰している、そしてその理由が、教授村の中での自身の出世のためですから、お粗末と言わざるを得ません。大学教授の多くは、自ら手術をすることは少なく、教室のマネジメントや研究論文の作成が評価の対象になるので、本人達は手術の学会に行かなくても困らないのかも知れません。
可哀想なのは、これら大学の先生達で、やはり教授の指示には従わなければ、日常の仕事もやり辛いのは明白ですから、この「手術について最新の知識や情報にアクセスし、最も高いレベルで議論がなされる」ところに参加できないのです。
どんな立場の人にも、定年と影響力の衰退は来るわけですから、この様な恥ずかしい蛮行は、数年先には指示した人の汚点として語り継がれます。
皆さんは、白内障手術を日常的にやっているのに、その白内障手術の技術向上の場に参加出来ない医師をどう思われますか?(はじめから興味を示さない医師もいますが・・・)
今後、ご自身が手術を受けなければいけないとき、手術関連学会での活動も、病院選びの参考にされると良いかな、と思います。